便秘はなぜカラダに悪いのか?
若い女性に多い便秘の悩み
ストレス社会に暮らす現代人には、便秘に悩む人が増える傾向にあります。とりわけ若い女性が便秘の症状を訴えるケースが多くみられ、生活スタイルや食習慣などによって、便秘の症状もさまざまです。そもそも女性には、生理条件などによって便秘になりやすい体質があるものです。思春期になると黄体ホルモンやエストロゲンが活発に働きだし、だんだんと女性らしい体つきになっていくわけですが、この黄体ホルモンが腸の働きを鈍らせるため、便秘になりやすくなります。生理前になぜか便秘がちになり、生理が始まって黄体ホルモンの分泌が止まると、突然スムーズな排便となるのはこのためです。また、妊娠したとたんに便秘がちになるのは、上記と同じようにホルモンの影響が考えられます。
女性である以上、こうした生理的な部分は避けられないものですので、便秘を引き起こす生活スタイルに目を向けてみましょう。たとえば、便意をもよおしてもトイレを我慢して、そのうちに便意そのものを感じなくなってしまう。また、自己流のダイエットに励むあまり、便秘がちになってしまう。このような理由から便秘になる方が、増える傾向にあります。
1つめに挙げた「トイレを我慢する」という行為は、若い女性に限ったことではありません。うっかり寝過ごしたり、朝食を摂らずに出かけたり、1日のうちで腸がもっとも活動する「朝の生活リズム」が乱れているようでは、便意をもよおすどころではありません。また、とにかく清潔を好む潔癖症の人は、誰が使ったか分からない便座にお尻をつけられないという場合もあり、排便は自宅でのみするという男性も増えてきているようです。ただし、我慢して体の中に抑え込んでしまった便は、2~3日排出されることはありません。
2つめに挙げた「ダイエット」による便秘も大きな問題です。痩せたいと願うあまりに食事量を極端に減らし、消化のよいものばかり食べていると、せっかくの食事が腸内でほとんど消化・吸収されて、便として排出されるものが残らなくなってしまいます。出るものがないのだから、「便秘ではない」と考えてしまいそうですが、そうではありません。腸内で発生する発がん物質をはじめ、中性脂肪やコレステロールなど。本来は便と一緒に排出されるべきものが、体の中に留まるということになり、何らかの悪影響が懸念されます。
低年齢化する便秘
ある食品メーカーが、首都圏に暮らす小・中・高校生を対象にしたアンケート(平成8年実施・対象人数350人)を行いました。毎日の排便習慣についての質問に対して、「排便がない日もある」、「排便しない日が多い」と答えた生徒は全体の42%で、女子高校生に限っては66%にも達していました。排便がなかった最長日数をみると、「5日以上」という回答が、女子中学生で22%、女子高校生では36%となっています。一方で、「1日1回規則正しく排便している」生徒は全体の38%に留まり、「朝食後の学校に行く前」と答えたのも全体の38%という結果でした。
アンケートの中では「家のトイレじゃないと落ち着かない」、「外のトイレは汚い」といった理由から自宅以外での排便を避ける傾向がみられ、「家に帰るまで排便を我慢する」生徒が66%もいることがわかりました。排便リズムを整えることの大切さ、排便と自分の体との関係を理解していないのでしょうか。実際に、「排便しなくても気にすることはない」と回答した生徒は、全体の74%にも及ぶのです。
それでも、この年代は体の活動も活発ですから、普通の生活を送っていれば1日1回排便があるのは当たり前のことです。ところが、遅い時間まで塾や習い事に通って夜更かしになってしまったり、おやつに甘いものや・スナック菓子などを食べたり、子供の排便について親が無関心であったり。生活リズムの乱れ、食生活の乱れに加えて、排せつに対する意識の低さなどが、子供たちの便秘につながっているようです。
子供たちの便秘はまさに、「現代社会を映す鏡」だといえるかもしれません。
幼児期の便秘
現代社会においては、大人や子供だけでなく乳幼児たちも忙しいようで、2~3歳児にも便秘の子供が目立つようになりました。幼稚園や保育園での集団生活に加えて、さまざまなお稽古事などがあるために排便を我慢し、便秘になるケースがみられます。便秘になると便そのものが硬くなり、肛門から排出するときに痛みを伴うことで、排便を怖がる子供も多いです。ある医師によると、乳幼児であっても痔に悩む子供は多いとのこと。お尻が痛いと排便を嫌がるようになり、腸の中には硬い便が残ったままになります。こうした悪循環からさらにトイレを遠ざけるようになると、最終的には排便時のいきみ方まで忘れてしまうこともあるとか。最悪の事態を避けるためには、親がこの時期の子供に付き合って、しっかりとトイレトレーニングをする必要があるでしょう。
便秘の原因をチェック
便秘になる原因は、人によってさまざまです。その時々の体調、とりまく環境によっても異なるものですが、もしも今便秘をしているならば、ぜひご自分の生活の中から原因を探してみてはいかがでしょうか。
食事の内容・摂り方が原因かも?
●食物繊維が少なく、消化の良いものばかりを食べている
●朝食を食べない
●緑茶や紅茶ばかり飲んでいる
→緑茶や紅茶に含まれるタンニンは、腸のはたらきを抑制します
ストレスが原因かも?
●仕事がうまくいかない
●人間関係に悩んでいる
●いじめにあっている
運動不足が原因かも?
●家の中にこもりがち
●外出はあまりしない
●車で移動することが多い
トイレを我慢することが原因かも?
●決まった時間にトイレに行く習慣がない
薬の影響が原因かも?
便秘は顔色でわかる
ストレスの多い現代社会では、便秘に悩む人がたくさんいます。「私は便秘ではない」と思っていても本当は便秘だというケースも多く、100人中90人は便秘だと言ってもいいでしょう。真面目そうな人、消極的にみえる人、アクティブな人、ネガティブな人…。人の顔は誰として同じ顔はありませんが、顔つきによって印象が決まる、いわば人間の玄関のような役割があるものです。人の奥深くにある性格診断のようなことまでは無理でも、健康かどうかといったことは容易に判断できるでしょう。人の顔は、そのときの健康状態によって変化をするものであり、顔色と排便と体調は大きな関わりをもっています。
耳たぶを指でもんだり、足の裏で青竹を踏んだりしたことがあると思いますが、これは、耳や足裏の神経を刺激して血液の循環をよくする昔からの健康法。顔のまわり、手のひら、耳、足裏には、内臓の神経が集まっていると言われているのです。全身の健康状態が顔にあらわれるのはこのため。快便の人であれば、誰からも「健康そうですね」と声をかけられるはずです。肌がつやつやとして、ちょっと赤味がさして。全身に新鮮な血液が巡っているからこその健康色は、快便が続いている証なのです。
便秘と肝臓の役割
肝臓が正常に働いていると快便が続き、快便であれば肝臓は正常に働いていると考えられます。成人男性で約1.5kg、成人女性で約1.3kgあるといわれる肝臓は、私たち人間の体でもっとも大きな臓器です。肝臓は「沈黙の臓器」とも言われるように、正常に働いているときにはとくに肝臓の存在を意識することはないでしょう。実際に、胃が痛い、頭が痛いと言うことはあっても、肝臓が痛い・かゆいと感じたことはないと思いますが、実は肝臓ほどデリケートな臓器はないのです。
私たちが食事を摂ると、胃で食べ物を消化し、それが小腸に送られます。小腸では、粘膜のまわりの温度差などによって毛細血管が吸収し、門脈を経て肝臓へと送られるのです。このように、同化され、貯蔵された後、肝臓の働きによって、私たちの体にあう栄養素へと放出されます。
肝臓の役割は大きくわけて4つ、(1)同化作用、(2)解毒機能、(3)排泄機能、(4)胆汁の生成 があります。これら4つの機能を使いながら、私たちの体の中で「代謝の中心的な役割」を果たしているわけです。人間の体を自動車で例えるなら、心臓はエンジン、肝臓は燃料タンクだと言われますが、肝臓は私たち人間の体における「化学工場」だと言えるのではないでしょうか。肝臓は毎日、私たち人間の体に入ってくる物質をより分け、栄養になる分については吸収し、有害だと判断したものは分解してくれているのです。痛い・かゆいといった文句も言わず、ただ黙々と働き続ける肝臓。私たちは、肝臓の有難みを忘れて、粗末に扱ってはいないでしょうか。たとえば、お酒を飲むにしても自分の許容量で。2合しか飲めない人が5合、6合と飲んでは、2日酔いになりかねません。肝臓は、私たちが摂取したアルコールをホルムアルデヒドに分解し、さらに炭酸ガスと水とに分解します。もしも許容量を超えてしまうと分解しきれませんから、血液の中にアルコールが残ることになるのです。血液の中に残ったアルコールが何年も蓄積され、ついには肝臓が悲鳴をあげることがあるかもしれません。
農作物の化学肥料
肝臓に負担をかけている物質は、アルコールだけではありません。私たちが毎日摂る食事によって、いかに肝臓を酷使しているか、その食事内容も例にあげながら説明していきましょう。昔の日本では、畑の肥料といえば糞尿が当たり前でしたが、近代化が進むなかで排尿はすべて浄化槽に流すようになりました。本来であれば最高の肥料である糞尿を、畑に還元することはなくなってしまったのです。
私たちが毎日の食事のなかで摂取する栄養分は、全体の2割程度しか吸収されていません。体に残らない8割ほどは、そっくり排出されることになるのです。鶏を使ったある実験についてご紹介しましょう。一羽の鶏に毎日エサをやり続けると、1年間に250個の卵を産みました。その鶏が排出した糞をそっくり保管して、2年目にはエサの代わりに糞と水だけを与えてみると、その年は150個の卵を産んだそうです。3年目も同じような条件で糞と水を与えると、1年で50個の卵を産みました。このように、数こそ減ったものの、鶏は痩せることもなく卵を産み続けました。つまり、糞の中には、健康を維持するための栄養素が含まれているということです。畑の土の中、ほんの一握りの土の中には何十万というウイルス菌、病菌、細菌類がいて、お互いに闘っています。堆肥に含まれるのはほとんどが良性の病菌類で、堆肥をすればするほど良い病菌類が野菜の根について、生育も順調になります。良い病菌類のもとで育った作物はとても丈夫で、消毒もほとんど必要がないほどです。
一方、近年では糞尿に代わり、ほとんどの畑に化学肥料を散布するようになりました。この化学肥料によって、0.1%あるかないかという悪い病菌類が勢力を増すことになり、作物が病気にかかりやすくなってしいます。今の農作物は農薬だらけと言われますが、作物が病気になるのを防ぐためには消毒をしなければなりません。いちばんの原因は化学肥料にあるわけですから、石油や石炭からつくった化学肥料をやめて、有機質の堆肥や魚糞、豚糞、落ち葉の腐葉土などを使うべきなのです。良い病菌類で畑を健康的な状態にしてあげれば、消毒という名の農薬を使う必要もなくなるでしょう、
こうした菌類のほか、畑の土の中には何万という数の微生物も存在します。中でも、40種類ほどいる線虫(ネマトーダ)という微生物は、2種類を除いてほとんどが良い微生物です。野菜や植物に害があるのは、根を腐らせるシスト線虫、根を瘤(こぶ)にしてしまう根瘤線虫の2種類で、化学肥料の散布は悪い線虫の異常繁殖につながります。土壌の洗浄、葉面の洗浄をダブルで行うことになってしまうのです。
健康食品として知られるコンニャク同じことです。私たちがスーパーなどで目にするコンニャクの多くは、原料となる芋に週に一度、石炭ボルドー液といわれる農薬を大量に撒いています。雨が降ろうと、天気などに関係なく、大量に。そうしてつくられた不健康な食品を、私たちは健康食品だと思って食べているのです。
アレルギーと化学肥料
ちょっと大きな病院などでは、アレルギーの専門外来を設けるケースが多くなりました。近年、アレルギー症状に悩む人が増え、アトピー性皮膚炎やアレルギー性のぜんそくなどで受診する子供も多くみられます。こうした子供たちは、家の中のほこり(ハウスダスト)に反応してアレルギーを起こす場合、牛乳や卵、小麦や米が食べられないという場合もあります。もしかすると、こうしたアレルギーを引き起こしているのは、化学肥料かもしれません。
たとえば、東南アジアの国々では、今でも農作業に人糞などの有機肥料を使っている地域が残っています。お腹の中に回虫をもっているという人は沢山いるはずですが、アレルギーがあるという子供の話はあまり聞くことがありません。昔の日本でも、回虫もちの子供はたくさんいて、よく虫下しの薬を飲まされたものです。衛生環境が整った現在では、虫のいる子供はほとんど見なくなった一方、アレルギーの子供がずいぶん増えました。これは、日本の農業が、有機肥料から化学肥料へと変わったことと無関係ではないでしょう。
実際に、回虫のいる子供の減少とアレルギーの子供の増加を見て取れる統計もありますが、回虫とアレルギーが直接関係しているというよりも、回虫が発生するような農業のもとでは、アレルギーが起こりにくいということかもしれません。日本の農業は、単位面積あたりの農薬使用量が世界一多く、主に有機塩素系の残留農薬については、他の国に比べて5倍も使用されているそうです。私たち日本人は、そんなにも大量の農薬を使った穀物や野菜を食べて暮らしているのです。
薬漬けの肉類
日本の農作物に大量の農薬が使われていることは分かりましたが、一方で蛋白源の肉類はどうなっているでしょう。どうやらこちらも安心できないようです。たとえば鶏の場合はブロイラーといって、養鶏場の狭い檻の中に押し込められてエサを与えられ、無理やり太らせようと飼育されます。運動もできないような狭い場所で大きく育てられるうちに体が弱って病気になりやすくなり、それを予防するために週に一度は注射を打たなくてはいけません。最近では、注射に代わって抗生物質入りのエサを与えるようになっているようですが、薬(抗生物質)漬けの卵・ブロイラー・豚肉などの肉類が、人間の体に良いはずがないでしょう。
ところが、もっと体に悪いものがあるのをご存知でしょうか? 牛肉の中でも最高級とされる「霜降り肉」は、体の毒とも言えるレベルです。その昔、死んでしまった牛を食肉にするわけにいかず、体が弱った状態の牛を死の直前に食肉にしたそうですが、それがまさしく「霜降り肉」なのです。
オーストラリアの牧場では、何万ヘクタールという広い牧草地で、数千頭の牛が放し飼いにされていますが、その肉は赤味が濃くて健康的な良い肉質です。ところが、その牛肉を日本へ輸出する際には、放し飼いをしていた牛を檻の中に入れ、半年にわたって運動をさせずに「霜降り肉」をつくるそうです。半病人となった牛は病気にかかりやすくなるため、ここでもまた抗生物質を使うことになります。
肝臓をいたわることこそ快便への近道
毎日の食事に登場する食材の中には、私たちが口にすべきではないものが多くあることがお分かりいただけたでしょうか。私たちの体が、小腸の毛細血管を通して栄養を吸収するとき、同時に体に悪いとされる物質も吸収することになります。こうした有害物質を分解するのは肝臓の役割ですので、肝臓の働きによって無毒化されて行きます。
肝臓の一部ともいえる器官に胆嚢があります。胆嚢は消化液として、ビリルビンの色素による黄色い胆汁を製造し、便が黄色っぽいのはそのためです。肝臓の働きが良好で、胆汁がさかんに分泌されていれば、排出される便は黄色いバナナのような状態であるはずです。
かつて日本が汲み取り式のトイレを使っていた時代は、トイレの中に一歩入ると強烈な臭気に襲われたものです。臭いのもとは、インドール、アンモニア、スカトール、亜硫酸ガス、メタンガスなど、食べ物が1日経つころに発生する有毒ガスです。もしも食べ物が翌日排出されないと、こうした有毒ガスが腸内で発生。腸を逆流して肝臓に送られ、こうした有毒ガスもまた肝臓で分解されることになるのです。
農作物の残留農薬や添加物などの有害物質、それに加えて便秘による有毒ガスなど。体の中に便を溜めれば溜めるほど、無毒化を担う肝臓の機能は疲れていくということがお分かりでしょう。便秘が体に悪いという理由は、ここにあるのです。
今日1日食べたものをきちんと消化して、翌日にすっかりカスを出すことができれば、肝臓に余計な負担をかけることはありません。きれいな状態の血液が全身を巡るようになれば、ちょっと赤味がさした健康的な顔色でいられるのです。
つやつやした肌のおかげで年齢のわりに若々しく見える人がいますが、実は外見が若いだけではなく、肝臓が正常に働いて血液がキレイだという証拠なのです。つまり、人の肝臓と老化との間には、深い関係があるということです。